スリルと快感の福袋

お久しぶりです。今夜も冷えますね。
寒い中、ご来店ありがとうございます。

ご無沙汰している間に、すっかり年末ですね。
まずは一杯どうぞ。 おつまみもいかがですか？

当店のおつまみは、いずれも主婦の私が自宅にお客様をお迎えするときにお出ししているものです。
よければGBMも。UNICORNの「雪が降る町」、懐かしいですよね。

年内のお仕事はいつまでですか？今日までって人も多いみたい。
にぎやかなクリスマスが終わったかと思ったら、すぐに年越し準備ですもんね。

近所のスーパーも、クリスマス一色だったのが、たった1日で迎春モード。
おまけに売り場の端っこには、もう節分とバレンタインのコーナーまで出てるんですよ。
ほんと、1年があっという間に感じるのも当然かもしれませんね。

でもね、この年末の気忙しい雰囲気、私は嫌いじゃないんです。
みーんな忙しなく予定に追われて、今年やり残したことを一気に片付けようとしてる、「すっきり新年を迎えたい」って気持ちが町の空気を活気づけている気がしてね。「私もがんばらなきゃ」って思うんです。

初詣には行かれますか？
うちもね、子どもが小さい頃は家族そろっての恒例行事だったんですけど、最近はバラバラ。子どもも大きくなってね、友達との約束や習い事で忙しいみたい。主人なんて、「三が日は一歩も外に出ない！」なんて今から言ってますよ（笑）

私ですか？
私はここ数年ね、毎年元日から大忙しなんですよ。なんだか分かりますか？

福袋です。
もうすっかりハマっちゃいました（笑）

12月頃からネットやSNSで「福袋情報」ばかり毎日チェックして。何が入っているかわからないけど、パンパンに膨らんだ大きな袋を持ち帰るトキメキと、家でそれを開封するときのスリル！その魅力に取り憑かれて、元日は早朝からデパートの列に並ぶんです。

だって、3万円分の商品が入って1万円なんて！！かなりお得でしょ？
中身が見えなくても、やっぱりつい惹かれて買ってしまうんですよね。

私の母は旅行が好きでね、お得なツアーを見つけてきては、お友達とよく行ってるみたい。
この前は、「格安ミステリーツアー」に申し込んだみたいで、内容を聞いたら「当日までどこに行くのかわからない」んですって。でもそのわくわく感と、なんといっても超お得なツアーで、大満足して帰ってきました。

主人は、「福袋なんて在庫処分だ」とか、「ミステリーツアーは売れ残った人気のないツアーだ」なんて皮肉ばかり言ってます（笑）

でも、私も母もちゃんとわかってるんです、本当はね。
だって、商売する側が、わざわざ損するような手法をとるわけないですよね。
でもつい衝動的に飛びついてしまう。

「中身はヒミツ」とか「あとからのお楽しみ」とか、目隠しされているような “おあずけ感” に、購買意欲をかき立てられるんですよね。

最近はお菓子でも「ひみつの味」が話題になってました。キャンディーのパッケージに、何味か書いてないんです。食べてみないと分からない。SNSで話題になったみたいで、うちの子どもたちも食べて真剣に考えてました。

やっぱり「ヒミツ」や「シークレット」なんて書かれるとつい気になって手にとってしまう。何味だったかなんて、もはや問題はそこじゃないんです。隠されているから知りたい。そこに手を伸ばす時の「スリル」と、それが明らかになるときの「快感」。それを体験したくって、自分でも気づかないうちにそういった商品を選んでしまってる気がします。

私たちの商売にも、この “スリルと快感” を応用すれば、そこに商売繁盛のヒントが隠されているかも知れませんね。

そうそう、私がよく行く立ち飲み屋さんはね、ハイボールを頼むとチンチロができるんです。
2つのサイコロを転がして「ゾロ目が出ると1杯無料！」ってわけ。そう言われると、やっぱりチャレンジしたくなるんですよ。だって1/6の確率って、わりと高い気がしません？

でもよく考えたら、ゾロ目が出る確率ってたったの16％。実際は当たらない確率のほうがずっと高いんですよね。それでも「得するかも…」ってドキドキしながらサイコロを振る。“チンチロリーン”って音がして、サイコロを覗き込む時のあのスリル…そして、「やったー！」となったり「あー惜しいっ、残念！」ってなったり、それが最高に盛り上がるんですよね。

ホントは「酎ハイが飲みたいな」って思ってるのに、チンチロしたさについハイボールを頼んじゃったりして…まんまとやられてます（笑）

これが「見えない価値」なのかな、って思うんです。
得とか損とか、数値化できるものだけじゃない、その時にしか味わうことのできない貴重な価値。福袋もサイコロチャレンジも、このわくわくする体験と時間に、みんなお金を払うのかもしれませんね。

あら、もうこんな時間。
また私ばっかりしゃべっちゃってごめんなさい。

そろそろ閉店なんですよ。
今日は来てくださって、とっても嬉しかったです。

今年もあと残りわずかですね。1年間、本当にお疲れさまでした。
また来年も、ご来店お待ちしていますね。

どうぞ良いお年をお迎えください。